さんぽするようなのんびりたび

いつまでも、あると思うな、500系

思い出と旅情を乗せて走り続けた名車へ

新幹線のホームで500系の姿を見るたびに、胸の奥底が少しだけざわめく。
静かに流れる、あの、こだま号の車内チャイムを耳にすると、旅の記憶がふっと立ち上がってくる。
どこへ向かうわけでもなく、ただただ遠くへ行きたいという気持ちをくすぐる音色。「いい日旅立ち」

500系新幹線の存在は、やはり特別だ。

流線形を極めたチューブ状の車体。
まるで未来からそのまま抜け出してきたような鋭いフォルムは、外観だけでなく車内にも独特の雰囲気をまとわせている。

指定席に腰を落ち着けると、柔らかな照明と深みのあるシートカラーが、意外なほど落ち着いた空気をつくり出す。
乗車率が低いことも多く、静けさに包まれたその静謐な空間は、旅の特別な時間を創造する。

現在の運用は「こだま」。
かつてのスター車両が、いまでは各駅に丁寧に停まりながら、静かに山陽路を走っている。
停車時間が長い分だけ、景色を眺めたり写真を撮ったりする余裕もある。
急ぐ旅でなければ、このゆっくり味わえる時間こそが500系の魅力だと思う。

そして何より、あのとんがったお顔。
他の新幹線とは明らかに違う。
ホームで待っていると、先頭車両が滑り込んでくる瞬間の迫力に思わず息をのむ。
エヴァンゲリオンを思い出す人も多いだろう。
いまはハローキティ新幹線としても親しまれているが、その運行も2026年春で終了する。

車内に漂う古の香りもまた味わい深い。
新しい車両では感じられない、歴史ある新幹線ならではの匂い、あれを好む鉄道ファンはきっと多いはずだ。

しかし、そんな500系も確実に終わりへ向かっている。
N700Sをはじめとした後継車両の増備に合わせて、500系は徐々に姿を消す。

2026年度末までに、現行6編成のうち4編成が用途廃止。
残る2編成も、2027年には営業運転を終了する予定だ。

1997年のデビューから、まもなく30年。
あの頃、わたしがまだ子どもの時分、500系を見上げていた時代から、ずいぶん時間が経った。
旅行に、帰省に、気ままなひとり旅に。
500系は人生のさまざまな場面で、そこに色合いを与えてくれた。

「いつまでもそこにある」と思い込んでいた500系。
その終わりが見えてきたいま、走る姿を目にできる時間は思っている以上に少ないのかもしれない。

だからこそ、もう一度乗りに行きたい。
ゆっくり走るこだま号で、あの丸みのある車内に身を沈め、静かなチャイムを聞きながら、窓の外の景色をのんびり眺めたい。

最後のその日まで。
500系に乗って旅ができることを、どうか大切に味わいたい。

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