— 誰が決めたか「名瀑」たちと、そこに並び立つ秋保大滝 —
日本には「日本三大〇〇」という言い回しがいくつもある。
三大和牛、三大夜景、三大稲荷、三景なんかもそうだが・・・そして三大瀑布。
だが、この“日本三大瀑布”という言葉。
実は 公式な定義は存在しない。
誰かが言い、いつの間にか人々がうなずき、
そのうなずきが重なって世の中に定着していく。
三大瀑布とは、そういう類の存在である。
華厳の滝、那智の滝、袋田の滝。
これらは「三大瀑布」と言えばまず名前が挙がる代表的な滝、
一部では 秋保大滝(あきうおおたき) をここに加えて“三大”と呼ぶ人々もいる。
果たして、その理由はどこにあるのだろうか。
秋保大滝の概要
宮城県仙台市・秋保。
温泉街の奥にある 秋保大滝 は、落差55m、幅6mの堂々たる直瀑。
ひとつの大きな水の線が真っすぐ落ちていく、
実に潔い景観が特徴的。
上流までほぼ人工物がなく、
滝のすぐそばまで遊歩道で歩いていけるため、
轟音と水しぶきの生きた迫力を肌で感じることができる。
観光地として整備された滝というより、
自然そのままの滝に会いに行くという表現が似合う。
三大瀑布(主な三滝)とのステータス比較
| 滝の名前 | 落差 | 幅 | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 華厳の滝(栃木) | 97m | 7m | 直瀑 | エレベーターで滝つぼ近くへ行ける、日本を代表する名瀑 |
| 那智の滝(和歌山) | 133m | 13m | 直瀑 | 日本一の落差の一段滝、古来より神聖視 |
| 袋田の滝(茨城) | 120m | 73m | 段瀑(四段) | 観瀑トンネルあり、四季で表情が大きく変わる |
| 秋保大滝(宮城) | 55m | 6m | 直瀑 | 自然度が極めて高い、滝つぼ近くまで歩いて行ける、生の迫力 |
スペックだけを見ると、
華厳・那智・袋田の三滝に比べて落差のインパクトでは少々控えめに映るかもしれない。
しかし、秋保大滝には数字では測れない魅力がある。
秋保大滝の固有の魅力
①自然の息づかいをそのまま包み込む野性味
他の名瀑の多くは観瀑台やエレベーターなど整備が進んでいるが、秋保大滝は良い意味で“手つかず感”が強い滝。
川沿いの遊歩道を歩き、森の匂いを吸い込みながら滝へ近づく時間。
その過程が、そのまま滝の迫力を盛り上げてくれる。
②眺望の悪さが、なぜか心地よい
展望台からの眺望は、正直に言えば視界が木々に遮られやすい。
けれど、それすら不思議と味わい深い。
どこか 「見せるための自然ではない」
そんな日本の「わび・さび」の美意識に通じるものがある。
見ようとしても、自然は全面的には姿を見せてくれない。
チラ見せにはロマンがある。
でも、ちょっと歩み寄ると意外なほど近くまで寄り添ってくれる。
秋保大滝にはそんな距離感がある。
③滝つぼ近くまで歩いて行ける幸福
これは、三大瀑布の中でも際立ったポイント。
秋保大滝では、
滝の水しぶきが肌に飛び散る場所まで自分の足で行ける。
轟音、風圧、水の匂い
滝の「生」の迫力を感じられるのは、スペックの差を超える体験だ。
三大瀑布に数えられそうになる時点で
実のところ、ここまで滝の魅力を言葉で語ってきたが、
秋保大滝が三大瀑布の候補に挙がる時点で、
もはやその素晴らしさは説明するまでもないのかもしれない。
名瀑とは結局、
「人々が心の中で選んだ滝」の集合なのだろう。
結局、三大瀑布とは何なのか
こうして比較すればするほど、
最後に行き着く答えはとてもシンプル。
結局は、各々の胸の中にある「三大瀑布」
それでいい、いや、それがいい。
派手で雄大な滝もあれば、
静かで心に染みる滝もある。
秋保大滝は、その後者の代表と言える存在とも。
訪れる人が自分の感性と向き合える、そんな滝。
あなたの三大瀑布には、どの滝が入りますか?
たびさんぽ
