旅をしているときに「ここで死んだらどうなるんだろう」と考える。
実際、旅の途中で亡くなる人は毎年一定数ようで、
例えば海外旅行中に亡くなる日本人は年間250~300人程度(外務省統計)、国内でも山や海、交通事故などで「旅の終着」を迎える人は少なくない。
いざ旅先で死んでしまったときに途方に暮れぬよう、あらかじめ頭の中を整理しておく必要はあるだろう
1.遺体が見つからない場合
これはある意味シンプルだ。
そのまま土にかえり、その土地とひとつになる。
山なら木の根に絡まり、海なら魚のエサとなり、砂漠なら風に混じって吹き飛ぶ。
究極のローカル体験ともいえる。
病的な旅人なら、最高の旅の終わり方ととらえる者も、あるいはいるかもしれない。
ただし現実には「行方不明者」として警察の捜索が始まり、7年経つと失踪宣告で法律上死亡とみなされる。
失踪宣告をする者がいればの話しだが。(民法30条、災害・事故の場合は短縮あり。)
相続なんかが絡むと親族はしばらくやきもきしそうだ。
2.遺体が見つかる場合
発見されてしまうと、人間社会の仕組みが動き出す。
(1)身元が不明
遺留品などでは身元の特定ができなかった場合。
警察が「身元不明死体」として扱い、指紋・DNAが照合される。
それでもわからなければ「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」と火葬・埋葬され、その後、身元特定のため告示される。
旅人は最終的に、その土地のお寺や合葬墓に「永住」する。
その費用は税金で賄われるため、生前のうちにしっかり納税しておくことがマナーと言える。
(2)身元が判明
遺留品などで身元が判明した場合はここでさらに分岐する。
- 親族が対応しない(または親族がいない)
行政が火葬・埋葬を行い、遺骨は保管後に合葬墓へ。旅の果てに知らない町へ永住することになる。
身元が不明の場合と変わらないが心境は複雑だ。 - 親族が対応する
最寄りの自治体に 死亡届 を提出し(提出先は死亡地・本籍地・届出人の所在地いずれでも可能)、火葬許可を得て荼毘に付される。
遺骨は親族のもとへ帰還し、最終的には「自宅」に帰ることとなる。
家に着くまでが遠足というが、ここで旅路を終えることがようやくできるわけだ。
3.少し気になること
- 宿泊中に亡くなればホテルは「延泊」ではなく「警察到着まで現状保存」扱い。
ありがたいがホテルはいい迷惑だろう。 - 海外なら日本大使館・領事館が現地当局と連携し、死亡証明や遺体搬送をサポート。
ただし搬送費は数百万円かかることも。(航空機のファーストクラスで帰国する方がお得) - 国内なら「死亡届は旅先の市役所でも出せる」ので、親族はまず現地へ駆けつけることになる。
4.おわりに

結局のところ、旅先で死ぬことはいくら事前に考えたところで「究極の他力本願」となる。
死亡届を出すのは結局他人、火葬の許可を出すのも他人。
最後は必ず「誰かの手続き」によって、自分の旅が正式に終わるのだ。
だからこそ、生きているうちは気楽に旅を続けるのがいい。
どうせ最後は、役所と親族と地元のお寺が、きちんと片づけてくれるのだから。