さんぽするようなのんびりたび

【四谷】須賀神社の階段で、時を超える。|『君の名は。』とスサノオの意外な結びつき

東京、四谷。 都心の喧騒から少し離れた住宅街に、ひっそりと、けれど確かな存在感を放って佇む赤い手すりの階段。

かつて、この場所にはカメラを構えた長い行列ができた。
2016年に公開され、社会現象となった映画『君の名は。』。
そのラストシーン、主人公の瀧と三葉が再会を果たした場所、それがここ「須賀神社」の男坂。

あれから10年。
ふと、この場所を訪れると、当時の熱狂とはまた違う、静かで温かい空気が流れている。

単なる「聖地巡礼」ではなく、この須賀神社に祀られている神様「須佐之男命(スサノオノミコト)」の神話と、映画の物語を重ね合わせながら、少しディープな「さんぽ」をしてみたい。

聖地として、そして「江戸の鎮守」として

千駄ヶ谷駅から約1.5キロ、新宿駅からは約2.4キロ。 のんびりと街のうつろいを感じながら歩くには、ちょうどいい距離感。

聖地としての側面が有名だが、須賀神社そのものは、江戸時代初期、徳川家光の時代からこの地に鎮座する非常に由緒正しい神社。
「四谷の天王様」として親しまれ、古くから江戸の庶民に信仰されてきた。

この場所がラストシーンに選ばれたこと。
それは単なる偶然ではなく、ここに祀られている神様のエピソードを紐解くと、不思議な「必然」を感じずにはいられない。

神話と映画の、不思議なリンク

須賀神社の御祭神であるスサノオノミコト(須佐之男命)。
彼の最も有名な神話といえば、「ヤマタノオロチ退治」。
実はこの神話と『君の名は。』には、意外な共通点が隠されているのをご存じだろうか。

1. 空を駆ける「大蛇」

スサノオが対峙したのは、八つの頭と尾を持つ「ヤマタノオロチ」。
一方、映画で瀧たちが立ち向かったのは「ティアマト彗星」。
夜空を引き裂くように尾を引いて落ちてくる彗星の姿は、まさに天を駆ける巨大な蛇そのもの。

2. 運命を変える「酒」

強大なオロチを倒すためにスサノオが用いたのは、「八塩折之酒(やしおりのさけ)」という強いお酒だった。
映画でも、「酒」は極めて重要なキーアイテムとして登場している。
三葉が作った「口噛み酒」。
時を超えて瀧がそれを口にすることで、運命という名の大蛇に抗うための「結び」を取り戻した。

3. 大切な人からの「贈り物」

オロチと戦う際、スサノオは守るべき女性・櫛稲田姫(クシナダヒメ)を「櫛(くし)」の姿に変え、自分の髪に挿して戦った。
これは、三葉が瀧に手渡した「組紐」を想起させる。
その時点では、時間のずれから二人は深くかかわりあうことはなかったが、三葉の分身とも言える組紐を、瀧はお守りのように身に着け、困難に立ち向かう。
愛する人が形を変えて、共に戦う。
この構図は見事にかさなりあう。

4. 母の不在という「孤独」

そして、少し切ない共通点も。
スサノオは父・伊邪那岐(イザナギ)の禊(みそぎ)から生まれ、母のぬくもりを知らない。
瀧もまた、作中では父と二人暮らし。
「母の不在」という孤独が、彼らをより強く、誰かを求め、守ろうとする行動へと駆り立てたのかもしれない。

10年越しの「結び」を感じて

こうして神話との共通点を踏まえて階段に立つと、そこに見える景色は少し違ったものになる。

ただのアニメの聖地としてだけでなく、古来より人々が語り継いできた「災厄に抗い、大切な人を守り抜く」という祈りが込められた場所。

映画の公開から約10年、作中の二人には3年の時間差があったが、我々はそれ以上の時間を、この現実世界で過ごしてきた。

あの頃の衝撃。
その後の世の中の変化。
そして今、静かに階段を見上げている自分。 その時間の流れを想うと、何とも言えない感情が込み上げてくる。

嬉しいような、懐かしいような、少しだけ切ないような。
深く静かに、感傷的になってしまう。

リアルな旅を通して、物語や神話に思いを馳せる。
エピソードの共通点はこじつけかもしれない。
でも、そんな時間の使い方が、旅の満足度をぐっと深めてくれるはず。

今度の休日は、新宿から少し足を延ばして。
階段を登りきったその先で、あなただけの「何か」を探しに行ってみてはいかがだろうか?


【スポット情報】須賀神社

  • 住所: 東京都新宿区須賀町5-6
  • アクセス: JR四ツ谷駅より徒歩10分、信濃町駅より徒歩10分

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